パリの水飲み場と「ヴァラス給水泉」【安心して飲めるパリのお水】

パリの通りや広場などの街なかでは、

公共の水飲み場をよく見かけます。

というのも、パリには、

水飲み場である給水泉や給水地点が

約1200カ所もあるんです。

パリ・サンジェルマン教会前のヴァラス給水泉(Fontaines Wallace)

これは、パリ市が

「誰もがいつでもお水を飲めるように」

と、設置しているものです。

パリ・ヴォージュ広場の給水泉と、芝生で寝ているパリジャン

また近年では、ペットボトルのゴミを減らす目的も兼ねています。

パリのお水は高品質

パリのお水は、品質が厳しく管理されています。

お水を管理しているのは「パリ水道公社(eau de Paris)」。

パリ・ヴォージュ広場の給水泉の「eau de Paris」のパネル

そして、この「パリ水道公社」と、

保健当局から委託された「独立した研究所」によって、

内部と外部のダブルで常に水質を測定をしています。

パリ・モンマルトルの公園内の給水泉

そしてパリのお水には、

カルシウムやマグネシウム、ナトリウムなど、

わたしたちの体に不可欠なミネラル分が含まれています。

なので、老若男女、

<誰でも><無料で><安心して>

お水を飲むことができます。

パリ・リュクサンブール公園のヴァラス給水泉(Fontaines Wallace)のお水を飲む子供たち

ペットボトルのお水を買わなくても、

パリの街なかにある水飲み場で

いつでも喉をうるおせます。

マイボトルを持っていくといいですね

いろいろな種類の給水泉

パリの給水泉は、形がさまざま。

しかも水道水(ミネラル水)だけでなく、

地下水や炭酸水も出る給水泉もあります。

給水泉でよく見かけるのは、

深緑色の4人の女性像が

鱗状のドームを支えているかたちの

ヴァラス給水泉(Fontaines Wallace)

(あとでご紹介しますね)。

パリ・シャンゼリゼ通りのヴァラス給水泉(Fontaines Wallace)
ヴァラス給水泉(Fontaines Wallace)(写真右)

素敵なデザインのオブジェにしか見えない。

そして、公園や広場にある、ボタンを押すとお水が出る給水泉。

パリ・リュクサンブール公園のヴァラス給水泉(Fontaines Wallace)で遊ぶ子供たち

こちらはとてもたくさんあります。

パリ・パレロワイヤルの庭園の給水泉

パリのマレ地区にあるヴォージュ広場で

お散歩をしていたときのこと、

所どころにある水飲み場(給水泉)がかわいいので

写真を撮っていました。

パリ・ヴォージュ広場の給水泉

すると、その給水泉に男の子が近づいてきました。

お水を飲むのかな?

と、思っていたら、

お水を出さずに飲む素ぶり。

パリ・ヴォージュ広場の給水泉で飲み方を見せてくれている男の子

そのあと、ニコッと微笑んで

来た道を戻って行ってしまいました。

男の子は何も言わなかったけれど、

「こうやって飲むんだよ」

と教えてくれたようでした。

なんて優しい子なんだろう。かわいいな〜。

ミレニアム記念の給水泉

下の写真中央の給水泉は

ミレネール給水泉(Fontaine du Millénaire)」。

パリ・ミレネール給水泉(Fontaine du Millénaire)

2000年(西暦)を記念して新しくデザインされたものです。

パリの次の4カ所にだけあります。

  • ノートルダム大聖堂(La Cathédrale NotreDame)前の広場(4区)
  • サンミッシェル広場(Place Saint-Michel)(6区)
  • フランソワ・モーリアック広場(Quai François-Mauriac)(13区)
  • ガレンヌ広場(Place de la Garenne)(14区)
パリ・ミレネール給水泉(Fontaine du Millénaire)でお水を飲むパリジャン

地下の天然水が飲める給水泉

地下水が飲める給水泉は、

アルビアン給水泉(Fontaine à l’Albien)」。

パリは盆地になっていて、

地下には巨大な水脈があります。

その地下600m(最大深度900m)のアルビアン帯水層から

地下水を引き込んでいるんです。

この地下の天然水は、

ミネラル分が少なく、鉄分がとても多い。

そのため、給水泉には鉄分を除去する装置が設置されていて、

公衆衛生上の基準値まで鉄分を減らしています。

この地下水が飲める給水泉は、現在では次の3カ所にあります。

  • ヴェルレーヌ広場(Place Verlaine)(13区)
  • ラマルティーヌ広場(Square Lamartine)(16区)
  • マドン広場(Square de la Madone)(18区)

炭酸水が飲める給水泉

炭酸水が飲める給水泉は、

ペチラント給水泉(Fontaine Pétillante)」。

2010年、はじめてパリに登場しました。

フランスの公共の給水泉で炭酸水を無料で提供したのは、

パリがはじめてなんだそうです。

この給水泉のそばには、

炭酸水を入れられるボトルの自動販売機が

設置されているところもあります。

これまでご紹介したもののほか、

子どもから体の不自由な方まで誰でも簡単に利用できる給水泉や、

ミスト装置が備えてあり、夏場の暑い時に噴射する給水泉など。

たかが「水飲み場」ではなく、

目的にそったデザインで利用者を引きつけ、

なおかつ機能的。

このパリのいい意味でのオタクのようなこだわりに

いつも感心してしまいます。

ヴァラス給水泉

パリの給水泉のなかでもひときわ街に調和しているのが

ヴァラス給水泉(Fontaines Wallace)」。

パリ・シェイクスピア・アンド・カンパニー書店の前のヴァラス給水泉(Fontaines Wallace)

深緑色で、優美な4人の女性像が

うろこ状のドームを支えているデザインが印象的です。

以前は、おしゃれなただのオブジェだと思っていました。

まさかこの素敵なオブジェが

「水飲み場」だとは思いもよらず。。。

パリ・サンジェルマン界隈のヴィトン前のヴァラス給水泉

「ヴァラス給水泉」は、1872年に

イギリスの大富豪リシャール・ヴァラス卿

(Richard Wallace:英語読みで『リチャード・ウォレス』)

が水不足に苦しむパリを救うために寄贈した給水泉です。

そんな彼の名前にちなんで

『ヴァラス給水泉』と命名。

この「ヴァラス給水泉」が設置されてから、

現在に至るまで給水泉が普及していきました。

ヴァラス給水泉ができるまで

パリの街なかに給水泉ができたのは、13世紀。

でも、1870年の普仏戦争、

1871年のパリ・コミューンの内紛によって

パリの建物や送水路が破壊されました。

それによりお水の価格が大幅に高騰。

多くの貧しい人々がお水を得ることが難しくなりました。

当時は、お水の価格の高騰により安ワインの方が価格が安く、

お水の代わりにワインを飲む人も。

そんな水不足に悩むパリ市民を救うために、

1872年夏、パリに惚れこんでいたヴァラス卿が

50基の給水泉をパリに寄贈。

パリ・シェイクスピア・アンド・カンパニー書店の前のヴァラス給水泉(Fontaines Wallace)2

パリの人々はとても喜び、

1876年にさらに10基、

その3年後の1879年にはまたさらに10基の給水泉を

増設するための資金を提供しました。

このおかげで、パリの人たちは

貧しくてもお水が飲めるようになり、

アルコール中毒者の増加を未然に防ぐことができました。

設置場所

ヴァラス給水泉の設置場所は、

設置当時、給排水設備を担当するパリ市が担当。

その多くは、小さな広場や、

遠くからでも見つけられるようにと

2つ以上の大きな通りの交差点に設置しました。

1931年以前に作られた給水泉には、

給水泉の台座部分に

「VAL D’OSNE」と「LEBOURG 1872」

の文字が刻まれています。

給水泉に刻まれた「VAL D’OSNE」と「LEBOURG 1872」の文字

これが刻まれた給水泉は、

設置当時から現在まで同じ場所にあります。

パリ・シャンゼリゼ通りのヴァラス給水泉(Fontaines Wallace)に刻まれた「VAL D’OSNE」と「LEBOURG」の文字

現在では、パリの20区のうち、1区以外の

2区から20区の公園や庭園、通りなどに

全部で100基以上の給水泉があります。

2022年3月には、パリの歴史を紹介する

「カルナヴァレ美術館(パリ市歴史博物館)」

の中庭にも設置されました。

パリ・カルナヴァレ美術館 - パリ市歴史博物館(Musée Carnavalet – Histoire de Paris)
カルナヴァレ美術館(パリ市歴史博物館)

デザイン

この給水泉の優美なデザインは、

芸術に関心の高かった

寄贈したヴァラス卿自身が考案。

そしてそのデザインをもとに

彫刻家シャルル=オーギュスト・ルブール(Charles-Auguste Lebourg)が制作しました。

パリ・ヴァラス給水泉から水を汲んだパリジャン

素材は、製造がかんたんで耐性のある、鋳鉄を使用。

現在でも、このオリジナルの金型は、

新しいモデルの制作に使われています。

パリの景観に調和しているこの深緑色。

ナポレオン3世やパリ市が、

都市に自然色を取り入れたいという思いから採用しました。

この色は、パリの象徴でもある

キオスクやモリス広告塔などにも合わせています。

パリ・モンマルトル・サクレクール寺院脇のキオスク
キオスク(Kiosque)
パリ・オペラ大通りのモリス広告塔(コロンモリス Colonne Morris)
モリス広告塔(コロンモリス Colonne Morris)

ただ現在は、7基だけ深緑色ではない、カラフルなものも。

2011年と2016年に設置されたもので、

モダンな雰囲気と視認性を高めることを目的としています。

モデルタイプ

ヴァラス給水泉のモデルタイプは、

4人の女性像の「グランモデル」タイプのほかに、

「壁はめこみモデル」タイプがあります。

パリ・ジョフロワ・サン・ティレール通りの壁はめこみモデルのヴァラス給水泉1

グランモデルはたくさんあるけれど、

壁のはめこみモデルは残り1基しかないんですよ。

この「グランモデル」と、

「壁はめこみモデル」について

ご紹介します。

グランモデル

グランモデルは、

深緑色の、4人の女性像がうろこ状のドームを支えているモデル。

高さが2.71メートルで、

重さが610キログラムあります。

実はこのルネッサンス風の4人の女性像は

同じものではなく、

目の開閉、足の位置、膝の位置、チュニックの結び目などが

それぞれ違うんです。

パリ・シャンゼリゼ通りのヴァラス給水泉

これは、「善意」「質素」「慈愛」「素朴」

を表しています。

壁はめこみモデル

現在1基しか残っていない、壁はめこみモデル。

パリ・ジョフロワ・サン・ティレール通りの壁はめこみモデルのヴァラス給水泉2

パリ植物園脇の通り

「ジョフロワ・サン・ティレール通り(Rue Geoffroy Saint Hilaire)」

にあります。

この給水泉は、

安価で設置することができたため、

病院や兵舎など、人が多く集まる建物の

壁面に設置されていました。

今でも現役です。

パリ・ジョフロワ・サン・ティレール通りの壁はめこみモデルのヴァラス給水泉で水を飲むパリジャン

まとめ

パリのいたるところにある、給水泉。

パリ市が、誰もが無料で安心して

お水が飲めるように管理しています。

パリ・モンマルトルの公園にある給水泉

この給水泉が普及したきっかけは、

普仏戦争やパリ・コミューンの内紛によって

建物や水路が破壊され、

お水を飲めない状況になったことからはじまります。

パリが大好きなイギリス人のヴァレス卿は

この水不足のパリを救うために出資し、

たくさんの給水泉を寄贈しました。

現在でも、ヴァレス卿の名前にちなんだ

この「ヴァレス給水泉」を含む給水泉は増設。

ミネラル分を含んだ水道水はもちろん、

地下の天然水や炭酸水も飲むことができます。

いろいろな種類の給水泉は

目的にそった機能的なデザインで

パリ市民や旅行者の喉をうるおしています。

パリの水飲み場マップ(「eau de Paris(パリ水道公社)」公式サイト)

パリでは、2022年9月10日から9月21日の間に

「ヴァレス給水泉」の150周年記念企画として

「ヴァレス給水泉発見ゲーム」があったようです。

今度パリへ行った際は、時期外れですが

ひとりで「発見ゲーム」をしたいと思います。

でも、このゲームは、

「ヴァレス給水泉」に貼られたQRコードから

インターネットにアクセスし

クイズに答える形式。

今度パリに行ったときには

もうQRコードなんて貼ってないだろうから、

ただマップの中の「ヴァレス給水泉」を

見つけるだけになりそうです。

Jeu découverte “Trouver les fontaines Wallace à Paris”
発見ゲーム「パリのヴァラス給水泉を探せ」

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