普段、世界中で当たり前に使っている長さの単位「メートル」。
この「メートル」は、フランスが制定しました。
パリには、「メートル」が制定された当時に作られた
「メートル」のものさしとなる「メートル原器」が、
2カ所にひとつずつ、2つだけ現存しています。
しかもむき出しのまま。
そのパリに現存する「メートル原器」についてご紹介します。
世界共通の長さを制定
「メートル」が制定される以前のフランスでは、
長さの基準は「そのときの王様の足の長さ」だったり、
地域や職業ごとでばらばらだったり、
とてもあいまいなものでした。
そんなあいまいな基準のなか、
当時の税の算定には
長さや面積などをもとにしていたのですが、
税の取り立てや支給などの際に
政府が都合よく有利にするために、
使用するものさしを長くしたり短くしたりしたようです。
また、フランス革命期には、
西洋諸国で国際的な取引が活発になりはじめ、
それぞれの国や業界で単位が異なるため、混乱に。
そこで、フランス革命期にフランス議会で
「長さの単位を世界共通で使えるように統一しよう」
と、新しい長さの単位「メートル」が制定されたのです。
「メートル法」を記念してつくられたメダルには
「すべての時代に、すべての人々に」
と刻まれています
「メートル」はギリシャ語「メトロン(metoron)」
(「測る」を意味します)が語源です。
「メートル」が制定され、
「1メートルの長さ」の「ものさし」として作られたのが
「メートル原器(Mètre étalon)」です。
大理石で作られています。
パリのメートル原器
「メートル」が「長さの新しい単位」として
18世紀の終わりに法律が公布されました。
そこで、「1メートルはこの長さですよ」
と広く普及するために、
パリの人通りの多いところに設置されたのが
「メートル原器」です。
この「メートル原器」は、
1796年から1797年にかけて、16カ所に設置されました。
そのうち、現在残っているのは2カ所。(あとでご紹介しますね)
このときの「メートル」は
「パリを通過する北極点から赤道までの子午線の長さの1000万分の1」
と、地球を基準にして定義されるものでした。
ちなみに現在の「メートル」は基準が異なり、
「1秒の299792458分の1の時間に、光が真空中を伝わる距離」
と、光の速度によって定義されています。
そのため、
現存する「メートル原器」の1メートルの目盛りと、
現在の1メートルの長さとは
若干異なります。
現存する「メートル原器」
当時パリの街なかに設置された
「メートル原器」16カ所うち、
現存している2カ所についてご紹介します。
ヴォージラール通り沿いの「メートル原器」
2カ所のうちの1カ所は、
パリ6区の「リュクサンブール公園」のすぐ脇をとおる
「ヴォージラール通り(Rue de Vaugirard)」沿いに
ひっそりと佇んでいます。
ここへ行くには、目を皿のようにして目がけていかないと、
うっかり通り過ぎてしまうくらいです。
この「メートル原器」の左上部にあるプレートによると、
「メートル法を普及するため、
パリの最も混雑した16カ所に大理石のメートル原器を設置。
これらのメートル原器は、
1796年2月から1797年12月にかけて
設置されました」
とのこと。
200年以上も同じ場所にそのままガードもされずにあるなんて。
歴史と共存しているかんじがパリの魅力のひとつです。
所在地
住所:36 rue de vaugirard 75006 Paris
「リュクサンブール公園」の
「リュクサンブール宮殿」から
「ヴォージラール通り」をはさんだ
向かいのアーケードの中にあります。
ちなみに「リュクサンブール宮殿」は、現在は
「フランス元老院(上院)の議事堂」
として使われています。
下のGoogleストリートビューの右端に
その「メートル原器」が確認できます。
ヴァンドーム広場の「メートル原器」
もう1つの現存する「メートル原器」は、
パリ1区の「ヴァンドーム広場(Place Vendôme)」に。
「司法省(Ministère de la Justice)」の入口の向かって左側に
ひっそりとあります。
ちなみに、上の写真は2014年に撮ったものですが、
現在は「メートル原器」の場所が少し移動して、
とてもきれいになっています。
所在地
住所:13 Place Vendôme 75001 Paris
「ヴァンドーム広場」内の
「司法省」入口の向かって左側にあります。
オリジナルの「メートル原器」は、
パリ郊外のセーヴル(Sèvres)にある
国際度量衡局(Bureau international des poids et mesures)
に保管されています。
まとめ
フランスで誕生した「メートル」。
それまでのフランスでは、長さの単位は
王様の足の長さを基準にしていたり、
あいまいなものでした。
そこで、フランス議会で
新しい長さの基準「メートル」を制定することになったのです。
「1メートルはこの長さ」と広く普及するために、
パリの人通りの多いところに設置された「メートル原器」。
現存しているのは、
リュクサンブール公園付近にあるものと、
ヴァンドーム広場にあるものの
2つのみです。
リュクサンブール公園でお散歩した際や、
ヴァンドーム広場でお買い物や
リッツホテル(Hôtel Ritz)で宿泊(うらやましい!)の際には、
ぜひ足をとめて、見てみてください。
基本情報
■ヴォージラール通り沿いの「メートル原器」
所在地:住所:36 rue de vaugirard 75006 Paris
※詳細は本文中の「所在地」へ
■ヴァンドーム広場の「メートル原器」
所在地:住所:13 Place Vendôme 75001 Paris
※詳細は本文中の「所在地」